野生動物学教室

RESEARCH THEMES研究テーマ

本教室は、生物多様性(Biodiversity)の保全を目標として、野生動物の保護 (Conservation) と管理 (Management) に貢献するための生態学/野生動物医学の教育研究拠点になることを目指しています。 クマ、シ力、アザラシといった大型晴乳類を対象動物とした生理・生態に関する保全生物学 (Conservation Biology)、ならびに野生動物医学 (Wildlife Medicine) 研究を柱として、野生動物が介在する感染症 (病原微生物) の生態や野生動物聞にみられるコミュニケーションについての研究を進めています。

 

 

なぜクマは肥満でも脂肪肝にならないのか?
~冬眠前時期の体脂肪蓄積メ力ニズムの解明

クマは、冬期に餌が極端に不足することから、長い進化の過程で冬眠という適応機構を獲得しました。クマの冬眠は、他の冬眠性哺乳類(シマリスやハムスターなど)の冬眠とは異なり、冬の間中中途覚醒することなく眠り続けます。そのため彼らは、冬眠する前に堅果類などを餌にして大量の体脂肪を蓄積します。この時の体脂肪蓄積メカニズムを明らかにすることを目指して、糖および脂肪代謝に焦点をあて、ホルモンの関与や肝臓および脂肪組織での代謝に関連する酵素群の発現を調べています。


 

 

生物多様性と感染症伝播様式との因果関係は?!
~北海道の野生動物におけるライム病

北海道には、ヒグマ、シカ、アザラシなど大型哺乳類を頂点に豊かな生物相が見られます。これら生物多様性が失われる(かく乱される)と、どのように感染リ スクが変わるのかを突き止めることを目標としています。その一つとして「生物多様性の減少が感染症の感染リスクを高める」という仮説を検証するため感染症 モデルとしてライム病を取り上げています。

 

 

アライグマ移入問題の解決法をさぐる

本来の生息地以外から人為的に持ち込まれた移入種は在来種の捕食や競合、在来近縁種との交雑、環境改変などにより生物相の均質化をもたらす可能性があります。北海道では北米原産のアライグマが野生化し、高い繁殖力から個体数が増加して問題になっています。
このような移入種問題に対して、生物の多様性を失う危険のある新たな移入の予防や、すでに定着した移入種の排除、及び科学的な管理が求められています。本教室では野生化アライグマ個体群の管理に必要な人口動態的データの解析を進めています。


 

 

標津町におけるヒグマADPSプロジェクト

ADPSプロジェクト(animal direct position system)とは本教室と標津ヒグマ情報センター、NTT-docomoとの共同事業で行われている研究で、ヒグマに携帯電話端末によるGPS発信機を装着し、ヒグマの行動域をリアルタイムにパソコンなどで知ることができるプロジェクトです。これにより、今まで不確実だったヒグマの季節ごとによる活動区域を解明する他、市外地でヒグマが出没した場合に地域住民や観光客等に対して的確な情報提供をし、ヒグマとの事故を未然に防ぐことにも役立てることを目的としています。

 

GPSを付けたヒグマの移動の軌跡

麻酔で眠らせたクマにGPSの付いた首輪を装着する様子


 

 

ルシャ地区におけるヒグマの土地利用様式と個体間関係に関する研究

知床半年ルシャ地区は、知床国立公園の中でも鳥獣保護区の特別保護地域に指定されており、容易に一般のビジターが訪れることができない場所となっています。そこでは、狩猟や駆除はまったく行われず、ヒグマが完全に保護されている状態なので、ヒグマの方も人の存在をまったく気にすることなく生活しています。そのような環境の中で、近距離でのヒグマ直接観察を行い、土地利用様式や個体間関係を行動学的に解析しようとしています。さらに、ダートバイオプシー法により体毛を採取し、遺伝子学的な解析も進めています。


 

 

ネパールでのアジアゾウの結核症疫学調査

ネパールでは、アジアゾウでの結核の発症が問題となっています。というのも発症の原因菌はヒト型の Mycobacterium tuberculosis であることが多いからで、すなわち、観光用に飼育されているゾウから人、あるいは人からゾウへ結核症が伝播している可能性を強く示唆するからです。
未だ感染ルートや感染様式に不明な部分が多く、その疫学調査が求められています。本教室では、現地でのゾウからのサンプリングと病原菌の検出と同定、さらには遺伝子型を解析することを目指しています。

野生動物の「保全」と「管理」に貢献する

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