野生動物学教室

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2022年あれこれ_坪田敏男

週一の楽しみ

 

今年になってプールに通い出した。2年ほど前に手術を受けた脊柱管狭窄症のリハビリのためだ。手術後はしばらく痛みもしびれもほとんどなく快調に過ごしていたが、最近になって腰にだるさを感じることが多くなってきた。病院で再度診てもらったが、とくに悪化している兆候はないという。せいぜい体幹を鍛えて筋肉をつけてください、というのが先生の見立てだった。ということで、週に1回の水泳を始めることにした。せっかくなのでかみさんも誘って平日の勤務後に市が運営するプールに通うことにした。自分のペースで700~800メートルくらいを30分程で泳ぐのがおおよそお決まりのコースになっている。未だぶっ続けで泳ぐことはできないが、数週続くと体が慣れてけっこう泳げるようになる。これだけであれば健康的なのであるが、終わった後には夕食を食べることになる。それでも当初は健康的な一日を目指して、車で行ける範囲でいくつかのレストランや蕎麦屋に行ってたのだが、そのうち何か楽しみが必要という話になり、家に戻ってきてから近くの居酒屋に足が向くようになった。水泳後の一杯のビールは格別な美味さであることを知った今、困ったことにこの習慣に体が完全に慣れ切ってしまったのである。

 

京丹後の造り酒屋巡り

 

今年のゴールデンウィークは京丹後に旅行することにした。以前機内の情報誌で京丹後特集をしていたのを見て以来、行きたかったところだ。とくに伊根町の舟屋には興味をそそられた。昔ながらの風情に海に面した古い町並みを歩いてみたかった。結果的には、想像していた以上に情緒たっぷりの町であった。ゴールデンウィークにもかかわらず、そんなに人手が多くなかったことも幸いした。5日間かけてゆっくりと伊根町、宮津町、そして天橋立を歩いた。もちろん日が高いうちはビールを飲み、日が落ちると日本酒といった感じで美味しいお酒もいただいた。意外だったのは、京丹後には造り酒屋が多かったことである。酒呑童子をはじめとする京丹後のお酒はいずれも風味たっぷりの美味しいお酒ばかりであった。米と水の質がいいのであろう。海の幸、山の幸にもよく合うものばかりであった。ある民宿で出された、地酒といわしの丸焼きのなんと良い取り合わせだったことか。青く輝く海といわしの身が最高の思い出となった。

 

エジンバラで感染したの巻

 

遂にコロナに感染してしまった。ここまでワクチンを3回接種して安心していた矢先であった。学生たちとエジンバラ研修に来ている最中の出来事であった。なんとなく喉に違和感があったのが、ある朝突然激しい痛みに変わったのである。研修をコーディネートしてくれていたニール先生が発熱と共にPCR検査で陽性になったとの情報が入り、俄かに我々もコロナ禍に見舞われたことを悟った。案の定、学生数人は発熱し、その後のPCR検査でも陽性判定が出た。ニール先生と最も多く会話をしていた私も陽性が出るのは至極当然のことであった。その後は、北大獣医の執行部とのやりとりにより延泊することが決まり、学生4名と居残り組になった。この6日間はコロナとの闘いというよりは、いかに気持ちを安定させて過ごすかという精神面での闘いであった。幸い、私を含めて全員軽症で済み、延泊の後半はすっかり休日を楽しむ日々となった。学生たちのケアをしないといけないし、仕事もしないといけないし、かといって体調を崩すことは許されないし、ちょっとした試練の毎日だった。ただ、これでコロナに対する免疫は完全にできたので、その点は気楽に暮らすことができることになった。

 

3年ぶりのネパール(前半)

 

3年ぶりにネパールにやってきた。コロナ禍ですっかり引きこもり生活を強いられたが、ようやく解放の時が来た。ただし、エジンバラ研修中にコロナに感染したので、研修後、札幌に戻ることなく成田からカトマンズに直行したのである。久しぶりの喧噪のカトマンズである。野良犬は当たり前で、野良牛が道路を塞いでいたりする。その中を人とバイクと車がひっきりなしに行違う。我先にと突っ込んでいくのはカトマンズならではの光景だろう。

カトマンズからすぐにポカラに移動する予定だったが、ポカラの天気が悪くてすべての便が欠航した。一日遅れでポカラに向かうことにした。25分の飛行はあっという間で、無事にポカラに着陸した。搭乗者から拍手が沸いたのは、欠航で待たされた末の感激だったのであろう。ポカラ空港にはリシが雨の中、迎えに来てくれていた。天気は好天気とはいかなかったが、一時ヒマラヤの雄姿を望むことができただけでもポカラに来た甲斐があった。夜には修了生のラビンが会いに来てくれ、久しぶりの再会を祝した。

 

3年ぶりのネパール(後半)

 

ダサインのお祭りが明け、日曜から通常業務が再開したようである。10月は2つの大きな祭りがあるので、みんなお祭り気分のようである。ポカラではほとんど観光に時間を割いた感じであったが、最後にレスキューセンターに行けたのは収穫であった。そこには数匹のヘビがいたのには驚いた。ネパールでは、キングコブラ(猛毒ヘビ)がいて、その保全が行われているらしい。ヘビといえども貴重な野生動物なのである。ポカラからは飛行機が取れず、7時間のドライブを強いられた。相変わらず道路状況は最悪で、120キロしかないのに7時間もかかるのである。ぜひネパール政府には道路工事のノウハウを早く導入してほしいものである。きっとネパールの観光業をより活性化することにつながるはずである。最後の2日間は4つのミーティングをこなす強行日程であったが、各々前向きな議論ができたミーティングであった。ここまで5人のネパール人大学院生に関わってこれたことを嬉しく思うし、その成果が出だしたことを実感させてくれた。せっかくなので、この成果を元にさらなる飛躍を望みたいところである。

 

年の瀬

 

2022年も今日で終わりである。日めくりカレンダーも最後の1枚となった。感じるスピードは季節や日によって変わるが、結局はあっという間に1年が過ぎ去った。仕事の面ではある程度充実した時間を送ることができたが、どこに向かおうとしているのか、未だ正確には指し示すことができていない。大学人として、研究者として、教育者として、また社会を動かす一員としてどこに軸足を置くのか、ある程度明確な指針が必要である。第一には、研究者としてのキャリアをさらに磨かないといけない。クマ研究の第一人者として高みを目指さなければならない。クマ研究の渦を作り、多くの人を巻き込めるかがその指標となるだろう。さらに、保全医学の研究者としての奥の深さを作ることも肝心である。自分は感染症の研究者ではないなどとは言っていられない。もっと勉強して知識の幅を増やさないといけない。次は教育者としての顔である。学生に教えるのはもちろんのこと、一般人や子供にも伝えるノウハウを磨く必要がある。最後に、社会を動かすには今の地位を最大限利用して、集団のトップとしてしっかり発信していこう。そのためには様々な経験と知識が必要である。様々な方面にアンテナをはり、時間を惜しんでモノを読む習慣を身につけたい。

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