7回目のネパール行
12月15~16日(月~火)
1日慌ただしく仕事をこなして出発の途につく。今朝からの大雪で道路は積雪20センチくらい。日中JRが停まっていたらしいので、無事に空港まで着けるかどうか心配であったが、何とか定時に走ってくれた。飛行機も飛ぶという。大きなトラブルはなさそうである。21:20発羽田行きの便に乗り、札幌をあとにする。羽田では1時間ほどの待機時間があったので、食べていなかった夕食を軽くとる。坐骨神経痛の薬は何として飲まないとならない。0:25発バンコク行きANA便に乗りこんだ。あとは寝ていくだけである。とはいえ、そうぐっすりと眠ることもできずうつらうつらしたら朝食の時間、そしてすぐに着陸態勢に入った。予定通り5時半にはスワンナプーム空港のラウンジにいた。5時間も休憩をとり、10:20発カトマンズ行タイエアーに乗り込んだ。約3時間のフライトの後、カトマンズ空港に降り立った。雨上がりとみえ、空はどんより、地面は水たまりが残っていた。いつもの喧騒よりは何となく静かな印象をもったけど、気のせいかもしれない。タクシーで街中を通り抜け、いつものクラリオンホテルに着いた。しばらくしてRabinが到着し、再会を喜んだ。すぐにJICAオフィスと大使館に赴き、今後の研究の進め方について打ち合わせを行った。これまでほとんど取り組んでこなかった分野なので、あまり積極的なお返事はいただけなかったが、この路線で話を進めることには同意していただけたようである。夜はホテルの近くのレストランで、例によってチキンモモとチキンピリでビールを飲む。久しぶりのカトマンズの夜である。
12月17日(水)
5時には目が覚める。荷物をまとめて6時20分出発。7時発ポカラ行のバスに乗る。観光客向けの長距離バスのようであるが、あまり客は乗っていない。シーズンからは外れているのだろう。ネパールでは珍しく定刻での発車となった。途中、どこがバス停なのかわからないが、いくつかの場所で乗り込んでくる客もいる。途中、朝食と昼食をとり、午後2時頃ポカラ到着。ヒマラヤの勇壮な姿が顔を見せる。すぐにアンナプルナ保護区の事務所に向かい、所長のGurung氏に面会する。歓待のスカーフをかけてもらい、しばらく歓談する。ラビンの研究のことを話し、協力をお願いする。所の車でホテルまで送ってもらうことになり、途中トリブバン大学でラビンの奥さんを拾い、ホテルに向かう。ヒマラヤクラウンホテルという立派なホテルであった。しばらく休憩した後、3人で散歩に出かける。近くの湖でボートに乗る。ネパールの西の方から来た客がもの珍しそうに話しかけてくる。中島の寺を見物し、ちょっとした観光を楽しんだ。そのまま近くのレストランで夕食をとり、そこで開催されたネパール伝統のダンスを見た。あまりやる気が感じられず、お世辞にもおもしろいダンスといえるパフォーマンスではなかった。とにかく1日のバス旅行の疲れを取るように、早めにベッドにもぐりこんだ。
12月18日(木)
6時起床。7時半にラビンの奥さんと別れて、われわれは手配したタクシーに乗って一路ガンデリックに向かう。途中朝食のために小さな食堂に寄り、オムレツ&パンをいただく。シンプルで美味しい。さらに車を走らせ、10時にガンデリックに着く。途中からはひどく荒れた道で、横に縦に揺られながらの悪路を走った。ガンデリックからは車道はなく、歩くしかない。いきなりヤギの群れを率いるおじさんに出会い、さらに馬ともロバとも見える動物に荷を積んだ一行ともすれ違う。あっという間にチベットの世界に迷い込んだ感じである。道はすべて平たい石が敷き詰められ、歩くのには困らない。しばらく歩くと汗がにじみ出るくらいの陽気で、気持ちよく景色を眺めながらのトレッキングとなった。シーズンではないが、トレッキングを楽しむ人もけっこういて、ネパールに来た実感が沸いてきた。2時間ほどかけてガンドレックの村に辿り着いた。すぐに保護区支所の責任者パラスに会った。彼はラビンと同級生らしく、とても仲が好さそうであった。専門は鳥、とくに猛禽類らしく、早速目の前を飛行した3種類の猛禽の名前を教えてくれた。とくに頭の赤いハゲワシは希少種らしく、あれは珍しい種であると強調していた。それにしてもいい天気で、眼前のアンナプルナサウスとフィッシュテールの迫力に圧倒された。しばらくオフィスで歓談した後、村の中を案内してくれた。トレッカー用のロッジが多数あり、村全体が観光地として機能していることがうかがい知れた。夜はパラスのお招きでたき火を囲んでのバーベキューをいただく。地鶏のようで固く締まった肉がおいしい。独特のスパイスも効いていてさらにうま味を引き立てている。いい加減、肉とラム酒をいただき満腹になってきたのでそろそろお暇しようとしたら、これからがディナーだという。例によってネパリ―セットが運ばれてきて、一気に腹に詰め込んだ。満足満足。満天の星の下でゆっくりと眠ることができた。ちょっと寒かったけどね。
12月19日(金)
7時を過ぎると朝日が差し、アンナプルナサウスとフィッシュテールの頂を赤く染めだす。これを写真に収めて朝の支度をする。9時に遅い朝食をとり、10時半出発。今日はヒマラヤツキノワグマの生息地を視察することになっている。パラスが案内役を買って出てくれ、彼に連れられて標高2,500メートルの山にまで登った。最近救護されたヒョウを放獣したらしく、その行動を追跡している研究者のことを紹介してくれた。そのすぐ近くにツキノワグマを自動撮影したという場所に行き辺りを探ってみると、水溜りの淵に大きな足跡が残っていた。パッドと指痕からしてツキノワグマのもののようだ。幅15センチの比較的大きな個体がここを訪れたようである。間違いなくツキノワグマがいることを確認し、山を下りた。約4時間の視察であったが、存分にアンナプルナ保護区のツキノワグマ生息地を見ることができた。村に戻り、少し休憩した後、村内のカルチャーセンターに連れて行ってもらい、現地の伝統的な服装を着せてもらい記念写真を撮ってもらった。その後、そこでローカルワイン(ロクシと呼ぶらしい)を賞味させてもらい、いい心地の中で再度たき火を囲んでの夕食を楽しんだ。2日間、ラビンとパラスといろいろな話をし、ここアンナプルナ保護区の状況がおおよそみえてきた。とても魅力的な場所であり、何とかツキノワグマ研究を軌道に乗せたいと強く思った次第である。アンナプルナベースキャンプまでのトレッキングもかなり魅力的に思えてきた。久しぶりに気合が入った、ウッシ。
12月20日(土)
朝焼けのアンナプルナサウスが目に入り起き出す。この光景とも今日でおさらばである。朝食を軽く取り、最後にパラスと歓談した後、村を後にする。1時間半ほど歩いてガンドレックの入口に到着。すぐに路線バスに乗り、ポカラに向かう。相当安いらしいが、相当揺られる。13時半頃にはポカラに到着し、遅い昼飯を食べた。町のおばさんが作るチャーメンは最高。ヒマラヤクラウンホテルにチェックインし、しばらくパソコンでメールチェックをした。夜は、所長やホテルの支配人らと夕食を共にしたが、よく知らない人の分まですべて支払いはこっちもちであった。こういうところはネパールだなあと思う。1万7千円也。まあ日本のことを思えば安いものだ。
12月21日(日)
6時起床。ポカラでの滞在を終えて、空路でカトマンズに戻る。再びクラリオンホテルにチェックインした後、久しぶりにDr. Dhakalと会う。違う部署に移ったらしいが、引き続きこの分野の要職にあるらしい。どうやらエリートコースを着実に上っているようである。この日は用事があるというラビンと別れて、お土産のショッピングを済ませた後、一人で最後の夕食をとる。例によって、チキンモモとチャーハンをビールとともに楽しんだ。
12月22日(月)
朝というより夜中の3時に目が覚めた。仕方がないので起きてパソコンを開く。今日でネパールともおさらばで、次の訪問地タイに向かう。久しぶりのネパールであったが、生まれて初めてヒマラヤの山に足を踏み入れたことは大きな一歩である。また、ラビンの研究も順調に始められそうな感触を得て、収穫は大きかった。あとは、予算面とどのくらいクマがいてくれる次第であるが、何とか成功させたいものである。来年再度来られることを願ってカトマンズ空港を飛び立った。