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2011 初めてのネパール行

(同行者はKyunglee Lee:大学院2年、大学院への入学が決まったSarad Paudelとはネパールで合流)

 

7/27

ほぼ予定通り12:30頃カトマンズ空港に着く。迎えが来ず、1時間待った挙句タクシーでClarion Hotelに来る。街中は、バス、車、バイク、自転車、イヌとウシが混じってすさまじい雰囲気である。交通ルールはないに等しく、とにかく我先にと車を走らせている感じ。ホテルに着くと、ちょうどSaradも着いたところで、初めての挨拶を交わす。これからの予定を打合せして、すぐにタクシーでDepartment of National Parks and Wildlife Conservation (DNPWC)に赴く。そこでEcologistのDr. Maheshwor Dhakalに会う。彼はつくば大学で学位(森林政治学?)を取ったということで、6年間日本にいただけあってとても流暢に日本語を話した。ネパールでの野生動物関係の仕事にはほとんど関わっているようで、野生動物の研究を進めるときには彼にコンタクトする必要がありそうである。Saradの仕事も、まずここに計画書を提出し、どのように共同研究を進めるか相談する必要がある。次に向かったのが、ヒトの結核の専門家のDr. Basu Dev Pandeyのところである。民間の病院で学生指導も行いながら研究を進めているようである。将来的には研究所を建設したいとのことであった。日本との親交は深く、他に2名各々長崎大学と神戸大学で学位を取ったという研究者も同席した。他に修士の大学院生が2名いた。彼は、鈴木定彦先生と密接に共同研究を進めており、結核患者がいた場合にLAMP法での診断を行っているとのことであった。培養はすべて今日会う予定にしているDr. Bhagwan Mahajanのところで行っている。Saradの博士論文研究への協力を約束してもらう。18時頃ホテルに戻り、夕食を取って就寝。

 

7/28

朝5時半起床。蒸し蒸しするが、気温が適度なのでほぼ問題なし。この文面を作成している。昨晩覗いたメールにはアクセスできない。インターネット開通は7時過ぎ。朝食を済ませて、Saradと合流。まずはNepal Anti-tuberculosis Association (NATA)に赴く。少し待たされてDr. Bhagwan Maharjanとその上司のDr. ##に会う。Saradの博士論文研究への協力をお願いし、今回サンプリングできたらその処理を行わせていただくことをお願いする。その後施設を見せてもらい、結核(ヒト)の培養菌も見せてもらった。培養等は問題なく行えそうである。当初日本からの援助もあったようであるが、現在はドイツの援助があるようである。次に向かったのがCentral Zooであった。ここで獣医師として働くDr. Jeewan Thapaと会う。彼は日本への留学を希望し、鈴木先生の元で申請したが、残念ながら不採択であったとのことである。動物園動物の診療に留まらず、野生動物の麻酔や獣医学的処置に駆り出されるとのことであった。ネパール唯一の動物園であり、そこで働く唯一の獣医師である。昼にSaradの奥さんと合流し、昼食をとる。さっとネパール料理を食べてすぐに空港に向かう。例のごとく人、バイク、牛を避けながら、対向車線などないに等しい追い越しでタクシーの運ちゃんは飛ばしていく。ぎりぎり飛行機には間に合った。何ともいいかげんな受付と積荷チェックであったが、それが普通に進んでいくところがネパールである。飛行時間は30分くらいで、Chitwanに到着。ロッジの人が車で迎えに来てくれていた。田舎の風景を楽しみながらロッジに向かう。聞いてはいたが、湿度の高さには閉口する。ロッジに着いて一心地ついた後、Chitwan NPのsenior wildlife veterinarianであるDr. Kamal Prasad Gairheと会って話をする。ゾウ、サイ、トラ、ワニ、さまざまな野生動物を相手に獣医療を行っているとのことであった。もちろんSaradの研究にも協力いただけることを約束した。その後Saradの以前の職場であるNational Trust for Nature Conservation (NTNC)を訪れ、Dr. Nareshと会う。ここでの活動をPPTで紹介してもらう。環境教育など様々な取組をしているのがわかった。その後、ゾウ施設などを見せてもらった。明日はElephant ridingが楽しめるという。Saradと別れ、われわれは夕食を頼んだ。が、夕食が運ばれたのは1時間半後の8時を回っていた。焼きそばは美味しかったからよかったけどね。

 

7/29

思いの外寝過ごしてしまい、6時に起床。寝苦しいと思っていたけど、けっこう眠れた。一シャワー浴びて、朝食へ。Saradは既に来ていていっしょに朝食をとる。朝から雨だったのがちょうど止んだので、Elephant ridingに行くことにする。Kyungleeは行かないという。Saradといっしょに昨日行ったNWCに行く。1時間半くらいのサファリであったが、見ることができた動物はdeer、samber、rihno、boarであったが、圧巻はやはりサイであった。1頭は急に近づいたので、けっこう近距離で見た。2頭目は川で水浴びをしているのを遠くから眺めた。アフリカと同じ動物がここで見られるのは、昔アフリカとインド半島とがつながっていたことを裏付ける貴重な事実である。改めて地球の成り立ちを学ばせてくれる。サファリの後はSaradの勤務地であるUniv. of Tribvurnに行きDr. とProf. I. P. Dhakal に会う。Saradの研究のこと、10月のワークショップのこと、今新しい大学を造る構想があること、これまでの日本の支援(とくに小林耕作先生の偉業)などについて話をした。さすが獣医のトップにあるだけあって考えていることが国策につながっている。Dr.にはMicrobiologyの建物の中を見せてもらった。ディープフリーザーや遠心機があるので、それなりの作業はできそうであるが、基本的に実験が行われている雰囲気はなかった。動物病院も見たが、ほとんど予算が投じられていないようで、日本レベルに引き上げるだけでも相当なてこ入れが必要と感じた。その後遅い昼食をとり(熱いスパイシーなヌードルとモモ(日本の餃子)が美味しかった。ロッジに寄り荷物を持ってElephant Breeding Centerに赴く。現地スタッフの協力の元、4頭のゾウから血液を採取し(耳静脈より)、2頭からTrunk dischargeを採取した。後者はゾウが容器を鼻に付けるのを嫌がり、苦戦した。夜遅くなり、ロッジで夕食を取ったのは9時を回っていた。寝苦しいけど眠れるのは疲れている証拠だろう。朝方は湿度も下がるのか安眠に変わる。

 

7/30

5時半起床。よく眠れた。その日または時間帯によって微妙に湿度が変わるようである。基本的には98%という話であるが。インターネットが不調。6時半にSaradがやってきて、すぐに朝食をとる。朝7時からNTNCで大きな会議があるので、その前にChief Wardenのところに挨拶に行くことにする。そこで、今日行くSegregating Elephant siteに入る許可書をもらった。このあたりは英国方式で何でも文書と許可が必要な国のようである。1時間半のドライブで、途中バケツとバナナを購入して10時頃現地に到着。3頭のゾウから血液とTrunk dischargeを採取する。1頭からは乳汁も採れた。治療中の1頭は調子が悪いようで、杭に頭を擡げていた。お茶をいっぱいご馳走になり出発した。途中、ワニとハゲワシの人工繁殖施設を見学し、ヘッドクオーターで2頭の孤児サイを見せてもらった。人に慣れていて触れるのには驚いた。1頭は母親が農家で殺され、1頭は川で救助されたのだという。往きから調子の悪かった車両を修理するのに1時間半ほど待たされ、帰着したのは18時を回っていた。すぐにNTNCで血清を遠心分離し、冷凍保存した。その後、昨日会ったSenior VeterinarianのDr. Gairheらと夕食を共にした。Saradの提案でこちらが2人を招待した。ビールの酔いですぐに眠れたが、寝苦しいのは3泊の中で最悪であった。

 

7/31

朝6時起床。相変わらずインターネットは不調。7時半頃Saradが来て、今日のスケジュールを打ち合わせた。すぐに朝食を取り(といってもフルーツサラダのリンゴがなく買い出しに行って30分ほど待たされた)、チェックアウトをして出発。3日間でドライブ料金を含めて9400ルピー(2人で折半)くらい。途中Saradを拾って、Cancer Hospitalへ向かう。Dr.と会い、今回採取した血液8頭分の血液検査を依頼した(4000ルピー)。ここは中国の寄付で運営されているらしく、血液生化学測定装置をはじめ、傾向顕微鏡やセルソーターなどハイテク機器も備わっている。これまで見た中では最も近代的な施設という印象をもった。ミルクティーを一杯ご馳走になった後、Saradの姪っ子を拾って空港に向かう。11:40発カトマンズ行に乗り、予定通り昼過ぎにはカトマンズに着いた。喧騒の街に戻ってきたが、気候はチトワンに比べればはるかに過ごしやすく、ちょっとほっとした。タクシーでNATAに行き、Trunk dischargeサンプルを預け、その後Hotel Goodwillに向かった。今日の作業はこれで終わり、休息を取った。私は街の本屋に行き、ネパールの国立公園とワイルドライフのガイド本を5冊ほど購入した。街で食べたドーナッツや揚げ物のお菓子が妙に美味しかった。ホテルで夕食(MomoとFried rice)を取り、すぐに床に就いた。夜誰かがドアをノックしたように思ったが、気のせいだったのか?

 

8/1

よく眠れて朝6時起床。朝から停電のようである。部屋のバスルームの作りが変で、シャワーを浴びると便器がびしょ濡れになる構造。誰がこんな設計をしのだろうか?9時にSaradと合流してNATAへ向かう。サンプルの処理についてBhagwanと打ち合わせて、KyungkleeとSaradはDNA抽出と培養の前処理を行う。昼過ぎまでかかり、3時頃Bhagwanと別れる。今回はBhagwanにはたいへんお世話になった。その後、Thamel地区に行き、遅い昼食をとり、土産を探す。ウール、シルク、パシミールなど高価なものも並んでいるが、結局コーヒーと紅茶とゾウの絵が入ったバッグを購入する。ホテルに戻り、Saradと日本での再会を約束して別れた。さらに、近く(?)のスーパーマーケットでネパールのお菓子をいくつか買ってくる。最後の夕食は軽くラーメンにした。明日は帰国である。

 

8/2

朝5時半起床。何やら騒々しい太鼓とラッパの音が聞こえてきた。おそらくヒンズーの催し物なのだろうが、こんな朝早くからとは人騒がせなものである。8時に朝食を済ませ、10時にチェックアウト。タクシーで空港に向かう。喧騒のカトマンズであったが、1週間の滞在でこの喧騒にもだいぶ慣れた気がする。ゾウとウシの国、ネパール。10月(アジア野生動物医学会)のドライシーズンが楽しみである。

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