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23年ぶりのアラスカ

第24回国際クマ会議に参加するために、23年ぶりにアラスカを訪れた。前回はアメリカ留学中の1993年7月にホーマー、カトマイ国立公園、ジュノーを訪れるためにやってきたのだった。まだ長女の花代が2歳の時だったので、移動はたいへんだったけど楽しい旅行だった。短いアラスカの夏を謳歌するかのように、あらゆる花が一斉に咲き乱れていたのが印象的だった。今回も6月とはいえ、夏の始まりを楽しむかのように花々が咲き誇っている。アンカレッジはまさに観光シーズンの始まりを告げていた。

 今回は口頭発表を引っ提げての国際クマ会議であった。思えば、30年前のウイリアムズバーグでの国際クマ会議以来の口頭発表であった。これまではポスター発表で済ませてきたけれど、やはり口頭発表の方が、充実感があっていいと思う。30年前は、初めての国際会議での口頭発表ということで緊張しまくりだったけど、今回は比較的落ち着いて発表することができた。30年の重みを感じずにはいられない。発表後には、トムやヘイコなど関心のある研究者から質問やコメントを受け、さらにいい時間を過ごすことができた。これを機にクマの生理学研究を加速させたいものである。

 この10年間、個人的には沈滞していた研究活動であるが(科研に関しては基盤研究(C)を2回のみ採択)、今回一つ重要なエポックを築けたように思う。もう一度原点に立ち返って、研究者としての道を真面目に進みたいと思う。とくにクマの繁殖に関しては世界と伍して競えるだけの礎は築いてきたはずなので、国際誌にバシバシと論文を出していかなければならない。考えたら、大学院生では加味根さん以来、クマの生理学研究は進んでいない。この3年間、いろいろと困難はあったけど、学部生の鈴木君と宮城君の頑張りで冬眠と繁殖の関係を調べてきた。もう少し自分の研究としての位置づけを明確にして、学生といっしょに研究を進めなければならない。そういう点では、今回の発表は、自分でデータを解析し、発表までこぎつけることができたのは大きな収穫であった。いろいろと日常の忙しさはあるが、それに感けることなく研究は大事にしようと思う。

 今日でアンカレッジ滞在は終りである。例によって毎日よく飲んだ。最近アラスカにビール・ブリューワリーが続々とできているらしい。半日ビール・ブリューワリー・ツアーに参加したけど、どこでも美味しいビールを出してくれた。とくにIPAは秀逸で、本当に美味しいビールである。アラスカの氷河から流れてくる美味しい水を使って作られるらしい。最後のランチも、ダウンタウンにあるGracier Brewhouseというところで最後のIPAを飲んでいる。これだけ美味しいビールはなかなか飲めるもんじゃない。少し甘味があるけどコクもあって素晴らしい。以前感じた田舎町風のアンカレッジとは違った印象を受けた一つはこの地ビールのせいだろう。どうやら背景には油田開発に成功した経済効果があるらしい。

 久しぶりのアラスカは変わらぬアメリカらしさを留めていた。おおざっぱなところは相変わらずであるが、なぜかその心地よさは人を惹きつけるものがある。とにかく物価が高いのは困るけど、また来たいという気にさせてくれるのがアメリカの魅力であろう。次来られるのはいつのことかわからないけれど、再度訪れたいものである。ぜひIPAを飲みにね。

 

例によっておまけ

失敗したこと:

1.アメリカ入国に必要なエスタを取っていなかった。成田空港で急遽インターネットに接続して取れたけど、チェックインぎりぎりであった。さらに、最初にアクセスしたのが代理店だったので時間がかかって間に合わず、結局無駄になった。7,400円をどぶに捨てた。

2.散財したこと。相変わらずアラスカの物価は高い。毎日の昼食が約25ドル、すなわち3,000円ほど。ビール代も含まれるけどね。

3.帰りの飛行機のチェックインがぎりぎりになってしまったこと。ホテル受付のおねえちゃんに1時間前に行けば大丈夫と言われ、そのまま鵜呑みにしてしまった。空港でゆっくりできず残念。2時間前に行けばよかったと後悔。あのおねえちゃん、考えたらけっこう失敗していた。クレジットカードを渡したら二重で料金が引き落とされていたのであった。

 

よかったこと:

1.日本から持ってきた、オークション用のクマ絵柄の日本手ぬぐいに15ドルの値がついたこと。出しなにかみさんに聞いて出してもらったもの、200円ほどのものらしい。

2.IPAをはじめ美味しい生ビールを飲めたこと。いやー、何度書いても書き足りないくらい美味しかった。

3.発表に対してレスがあったこと。これは重要、今回の発表はけっこう自信を持って臨んだので、レスがあってよかった。とくにトム、ヘイコはおもしろい結果だと大いに興味を持ってくれた。あとは、先を越されぬように早く論文にしないといけない。

4.毎日天気が良かったこと。アンカレッジに着いた13日から晴れだしたらしい。最後まで晴続きだったのは奇跡的だったかもしれない。半袖を持ってきてよかった。

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